天文学者にとって、光速が自然な距離の単位である理由はもう一つあります。宇宙の情報はほとんどが光によってもたらされますが、そうしたあらゆる光はすべて、光の速さ、つまり1年で1光年移動するのです。これは、私たちが宇宙で起こる出来事をいかに早く知るかの限界となっています。100光年先にある星の光は、100年前にその星から出て、今、私たちの近くに来ているということです。そして、その星の変化を最も早く知ることができるのは、100年後のことなのです。500光年離れた星の場合、今夜私たちが見ている光は500年前に出発し、500年前のニュースを伝えていることになります。
インターネットですぐに情報が手に入る時代だからこそ、これに不満を感じる人もいるでしょう。
「500年後でないとあそこで今何が起きているかが分からないの?」と。
しかし、これはあまり良い考え方ではありません。天文学者にとっての「今」は、光が地球上の私たちに届くときなのです。光が届くまでは、その星(あるいは他の天体)のことを知るすべはありません。
こう聞くと、大きな不満を感じるかもしれませんが、実はそれが大きなメリットになるのです。もし天文学者が宇宙の始まりから現在までを本当に解明しようとするならば、過去の各時代の証拠を見つけなければなりません。何十億年も前に起きた宇宙の出来事の証拠なんて、今どこにあるのでしょう?
その答えは、光の到着の遅れにあるのです。見る宇宙が遠ければ遠いほど、光がここまで来るのにかかった時間は長くなり、元の場所を離れた時間も長くなります。何十億光年も離れた宇宙を見ることで、天文学者は実際に何十億年も前の過去を見ているのです。このようにして、私たちは宇宙の歴史を再構築し、宇宙がどのように進化してきたのかを知ることができるのです。
そのため、天文学者は、宇宙の微弱な光をより多く集めることができる望遠鏡の開発に力を入れています。光を集めれば集めるほど、より暗い天体を観測できます。そして、暗い天体は平均して遠くにあるので、より深い過去の時代を知ることができるのです。ハッブル宇宙望遠鏡(図1.5)やチリの超大型望遠鏡(「天体観測装置」の章で詳しく説明します)などの装置によって、天文学者はこれまで以上に深宇宙や深い時間を見ることができるようになりました。
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