1.4 天文学における数字

01 天文学への誘い

天文学では、これまで考えたこともないようなスケールの距離や、これまで経験したこともないような大きな数字を扱います。そこで、天文学的な数字を少しでも扱いやすくするために、2つのアプローチを採用しています。1つ目は、科学的記数法scientific notationと呼ばれる大小の数字の書き方です。この方式は、読む人を圧倒するゼロの多さを解消できるという点で非常に魅力的です。科学的記数法では、500,000,000のような数字を書きたい場合、5×108と表現します。500,000,000を5に変換するために小数点を何桁左に移動させたかを、10の後の小さな上げた数字(指数exponentといいます)で表すのです。数字をシンプルに保つ2つ目の方法は、一貫した単位であるメートル法の国際単位系(SI)を使用することです(フランス語のSystème International d’Unitésに由来)。

学習のためのリンク

科学的記数法の仕組みとその有用性を説明したPBSの短いアニメーションをご覧ください。

天文学者が宇宙の距離を表すのによく使う単位に光年light-yearがありますが、これは光が1年間に進む距離のことです。光は常に同じ速さで進んでおり、その速さは宇宙で最も速い速さであることがわかっているため、距離を表すのに適した基準となっているのです。光年というと、時間を測っているように思えて戸惑うかもしれませんが、このように時間と距離が混同されることは日常生活でもよくあります。例えば、友人に映画館の場所を聞かれて、”駅から20分くらいだよ “と答えることがあるでしょう。

では、1光年は何キロあるのでしょうか?光は秒速3×105キロメートルという驚異的な速さで進むので、1光年は9.46×1012キロメートルになります。これだけ速いと、一番近い恒星まで簡単に届くのではないかと思われるかもしれませんが、恒星は私たちの想像以上に遠い存在です。一番近い恒星でも4.3光年、つまり40兆キロ以上も離れているのです。また、肉眼で見えるその他の恒星は、数百光年から数千光年の距離にあります(図1.4)。

Photograph of the Orion Nebula. This image is dominated by large areas and bright swirls of glowing gas clouds, crisscrossed by dark bands of dust.
図1.4 オリオン大星雲。オリオン大星雲と呼ばれる美しい宇宙の原料(新しい星や惑星を作るためのガスや塵)の雲は、約1400光年の距離にある。距離にして約1.34×10¹⁶kmと、かなり大きな数字である。この領域のガスや塵は、非常に強いエネルギーを持ついくつかの若い星からの強い光に照らされている。(NASA、ESA、M. Robberto (Space Telescope Science Institute/ESA) and the Hubble Space Telescope Orion Treasury Project Teamの協力によるものです。)

例題1.1:科学的記数法

2015年、この地球上で最も裕福な人間の純資産は792億ドルでした。これは天文学的な金額だと言う人もいるかもしれません。この金額を科学的記数法で表してみましょう。

792億ドルは、79,200,000,000ドルと書くことができます。科学的記数法で表すと、7.92×1010ドルとなります。

例題1.2:光年に親しむ

1光年は何kmあるでしょうか?(秒速3×105キロメートル)

  1. 光は1秒で3×105km進むので、1年で何km進むかを計算してみましょう。
  2. 1分は60(6×101)秒、1時間は6×10分あります。
  3. 1分間に60(6×101)秒、1時間に6×101分あるので、これらを掛け合わせると、時速は3.6×103秒になります。
  4. したがって、光の速さは 3 × 105km/s × 3.6 × 103s/h = 1.08×109km/hとなります。
  5. また、1日は24時間(2.4×101時間)、1年は365.25日(3.65×102日)です。
  6. この2つの数字の積は、8.77 × 103 時間/年です。
  7. これに時速1.08×109kmをかけると、9.46×1012km/光年となります。

これは、光が1年でカバーする距離が約10兆kmであるということを意味します。この距離は、地球の円周2億3600万周分に相当します。

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