心理学とは何でしょうか?
簡単に言ってしまえば、
創造性とは何か?
偏見や差別とは何か?
意識とは何か?
といったような疑問を解き明かすのが心理学の分野です。
心理学の定義
ここで、心理学の教科書ではどのように定義されているのか見てみましょう。
心理学の有名な教科書である『ヒルガードの心理学 第16版』では、
行動と心的過程についての科学的学問
金剛出版『ヒルガードの心理学』p6
と定義されています。
また、日本の代表的な心理学の教科書『心理学 新版 (New Liberal Arts Selection)』では、
人間の心・精神,あるいは,考え,感じ,行動する力とそのメカニズムを解明する学問
有斐閣『心理学 新版 (New Liberal Arts Selection)』p1
また、同じく代表的な教科書である東京大学出版会の『心理学 第5版補訂版』では、
こころについての科学的研究を目指す学問
東京大学出版会『心理学 第5版補訂版』
と定義しています。
このようにみると、心理学とは、心と行動を科学的に研究する学問のことを指す、といえそうです。
「聞く読書」Audible 30日間無料「科学的に研究する」とはどういうことか?
心理学が心や行動を科学的に研究することはわかりました。
では、「科学的に研究する」というのはどういったことを指すのでしょうか?
科学的研究において、心理学の研究者は、まず、研究の対象となる事柄が、どのように、あるいはなぜ起こるのかを説明するための仮説と呼ばれる暫定的な説明を考えます。その仮説は、科学的な理論に沿ったものである必要があります。
理論とは、自然界のある側面についての大まかな説明、あるいはそうした説明の体系であり、長期にわたる証拠によって一貫して支持されているものです。
その後、研究者はその仮説の妥当性を検証するために、観察や実験を行います。それによって得た知見は、他の人がそれを再現したり、それを基にして新たな研究を進められるように、出版したり研究会で発表したりします。
ここで重要なことは、科学者は、知覚できるもの・測定可能なものを検証するということです。
例えば、「鳥は幸せだから鳴く」という仮説を考えたとしても、鳥の幸せを測る方法がないため、これは検証できる仮説とは言えません。したがって、何か別のものを考える必要があります。鳥の脳の状態についての問いならば、測定可能かもしれません。
一方、鳥ではなく人間に対しては、歌っているのは幸せだからなのかを直接尋ねることができます。なぜなら、人間は言葉で伝えることができるからです。
このように、科学的心理学は、測定可能なデータに基づいた経験的なものといえます。一般に、科学は物質とエネルギー、つまり測定可能なものだけを扱うので、価値や道徳についての知識を得ることはできません。
同様に、「思考」は物質でもエネルギーでもないため、心に関する科学的な理解は非常に限られているのです。
科学的手法は、経験主義の一形態でもあります。経験的方法は、論理的な議論や過去の権威に基づく方法ではなく、実験を含めた観察に基づいて知識を得る方法のことです。
心理学が学問として認められるようになったのは、1800年代後半になってからのことです。それ以前は、心の働きについての考察は、哲学の範疇でした。
どんな行動でも、その根底には生物学的な作用があります。したがって、心理学の中には生物学のような自然科学の側面を持つものもあります。また、生物は単独では存在せず、私たちの行動は他者との相互作用によって影響を受けますから、心理学は社会科学でもあります。
なぜ心理学を学ぶのか?
多くの場合、学生が最初に心理学のコースを取るのは、人を助けることに興味があり、自分のことをもっと知りたかったり、自分がなぜそのように行動するのかを知りたいからです。
また、一般教養の必要条件を満たしたり、看護や医学部進学などのプログラムに必要であるという理由で、心理学のコースを取ることもあります。このような学生の多くは、この分野に興味を持ち、心理学を専攻することになります。その結果、心理学はアメリカの大学で最も人気のある専攻の一つとなっています(Johnson & Lubin, 2011)。
著名人の中にも心理学を専攻していた人は少なくありません。フェイスブックの生みの親であるMark Zuckerbergも、心理学を専攻していました。
アメリカでは、授与される全学士号の約6%は心理学の分野となっています(U.S. Department of Education, 2016)。
心理学を学ぶことで得られるメリットはさまざまなものがあります。
心理学の学生は批判的思考のスキルを磨き、科学的方法の使用について訓練を受けます。批判的思考とは、一連のスキルを情報に対して積極的に適用し、その情報を理解し評価することです。情報の信頼性や有用性を評価することは、さまざまな「事実」が氾濫し、その多くが誤解を招くように作られている世界において重要なスキルです。
例えば、批判的思考には、懐疑的な態度を維持すること、内部のバイアスを認識すること、論理的思考を利用すること、適切な質問をすること、観察を行うことなどが含まれます。また、心理学を専攻する学生は、学部の授業の中で、よりよいコミュニケーションスキルを身につけることができます(American Psychological Association, 2011)。
これらの要素が相まって、学生の科学的リテラシーが向上し、遭遇するさまざまな情報源を批判的に評価できるようになります。
このような幅広いスキルに加えて、心理学の学生は、人の行動を形成する複雑な要因を理解するようになります。私たちの生物学的な側面や、環境、経験が相互に影響し合うことで、人がどのような存在で、どのように行動するかが決定されるということを理解します。私たちがどのように考え、行動するかを導く基本原則を学ぶとともに、個人や文化を越えて存在する非常に大きな多様性についても認識するようになります(American Psychological Association, 2011)。
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