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1.3 現代の心理学

01 心理学への誘い

人格心理学

人格心理学personality psychologyは、各個人をその人たらしめている思考と行動のパターンに焦点を当てています。心理学の歴史的概観ですでに取り上げた何人かの人物(FreudやMaslowなど)や、アメリカの心理学者Gordon Allportゴードン・オルポートは、初期の人格理論に貢献しました。

初期の理論家たちは、個人の人格がどのように形成されていくのかを、それぞれの視点から説明しようとしました。例えば、Freudは、人格は意識と無意識の間の葛藤が生涯にわたって行われることによって生じると提唱しました。具体的には、彼は個人がさまざまな心理性的発達段階psychosexual stagesを経ることを理論化しました。彼によれば、大人の人格は、性感帯(性的快感をもたらす)が、口腔、肛門、男根、性器へと移動することを中心とした様々な葛藤の解決から生まれるといいます。Freudの理論の多くがそうであったように、この特定の考えも議論の余地があり、実験的な検証には適していませんでした(Person, 1980)。

最近では、パーソナリティの研究は、より定量的なアプローチを取っています。性格がどのようにして生じるかを説明するのではなく、性格特性personality traitsを特定し、それらの特性を測定し、特定の状況下でこれらの特性がどのように相互作用して、人がどのような状況でどのように行動するかを決定することに研究の焦点が当てられています。性格特性は、比較的一貫した思考や行動のパターンであり、個人によって異なる性格を捉えるには、5つの特性次元があれば十分であると多くの人が提唱しています。この5つの次元は、「ビッグファイブ」または「5因子モデル」と呼ばれ、誠実性、調和性、神経症傾向、開放性、外向性の次元を含んでいます(図1.13)。これらの特性は、生涯にわたって比較的安定していることが実証されており(例えば Rantanen, Metsäpelto, Feldt, Pulkinnen, and Kokko, 2007; Soldz & Vaillant, 1999; McCrae & Costa, 2008)、遺伝の影響も受けています(Jang, Livesly, and Vernon, 1996)。

図1.13 5因子モデルの各次元を示す。

社会心理学

社会心理学social psychologyは、私たちがどのように他者と関わりを持つかに焦点を当てています。社会心理学者は、自分の行動を説明する方法と他人の行動を説明する方法の違い、偏見、魅力、対人関係の対立を解決する方法など、さまざまなテーマで研究を行っています。また、社会心理学者は、他の人と一緒にいることで、自分の行動や思考パターンがどのように変化するかを調べています。

社会心理学の研究には興味深い例がたくさんあり、その多くはこの教科書の後の章で紹介されますが、ここでは、これまでに行われた中で最も議論を呼んだ心理学的研究の1つを紹介します。

Stanley Milgramスタンレー・ミルグラムはアメリカの社会心理学者で、「服従」に関する研究で有名です。ホロコースト後の1961年、大量の残虐行為を行ったとされるナチスの戦犯、Adolf Eichmannアドルフ・アイヒマンが裁判にかけられたときのことです。多くの人々は、ドイツの兵士が強制収容所で囚人を拷問することができることを不思議に思い、兵士が発する「単に命令に従っただけだ」という言い訳に不満を抱いていました。当時の心理学者の多くは、「命令に従っているからといって、あれほどの苦痛を与えようとする人はほとんどいないだろう」と考えていました。Milgramは、それが本当かどうかを確かめるために研究を行うことにしました(図1.14)。

後の章で述べるように、Milgramは、権威者(この場合は白衣を着た男性)に指示されただけで、被験者の3分の2近くが、死に至ると思われる衝撃を他人に与えてもよいと考えていることを発見しました。参加者が報酬を得るには調査に参加するだけでよく、調査を辞退することで他人に苦痛を与えたりより深刻な結果を招いたりしないように選択することができたにもかかわらず、です。なお、Milgramの実験は、研究協力者(研究に参加しているふりをしているが、実際には研究者のために働いていて、研究中にどのように行動すべきか明確で具体的な指示を受けている人)を利用した巧妙なものであり、実際には誰も傷ついたりはしていません(Hock, 2009)。

なお、Milgramのものをはじめとする研究は、研究参加者を欺き、精神的な被害を与える可能性がありました。そのことから、被害を与えないと主張できる場合を除き、研究対象者を欺くことを禁止し、原則として参加者のインフォームド・コンセント(説明を受け、納得した上での同意)を必要とするといった、心理学研究を行う際の倫理的ガイドラインが作成されるようになりました。

図1.14 スタンレー・ミルグラムの研究は、人が権威者の命令にどこまでも従うことを実証しました。この広告は、彼の研究の被験者を募集するために使用されました。
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