ストレス軽減のためのテクニック
ストレスに対処する方法は、自分をコントロールできる感覚を持つことや、ソーシャルサポートネットワークを構築することのほかにも数多くあります (図 14.24)。ストレスと闘うために人々がよく使う手法は運動です(Salmon, 2001)。
運動は、長時間 (有酸素) または短時間 (無酸素) のどちらでも、身体的および精神的な健康に有益であることが、よく知られています (Everly & Lating, 2002)。体力がある人は、あまり体力がない人に比べて、ストレスの悪影響に強く、ストレスからの回復が早いという証拠が多くあります (Cotton, 1990)。500 人以上のスイスの警察官および救急隊員を対象とした研究では、体力の向上はストレスの軽減と関連しており、定期的な運動はストレス関連の健康問題から保護されると報告されています (Gerber, Kellman, Hartman, & Pühse, 2010)。
運動が有益である理由の1つは、ストレスによる有害な生理的メカニズムのいくつかを緩衝する可能性があるためです。ある研究では、6週間運動させたラットは、軽いストレッサーに対するHPA軸(視床下部-下垂体-副腎)の反応性が低下したことが示されています (Campeau et al., 2010)。高ストレス者では、運動がテロメアの短縮を防ぐことが示されています。定期的に運動している人に若々しい外見がよく見られるのは、このためかもしれません(Puterman et al.、2010)。
さらに、成人後の運動は、海馬と記憶に対するストレスの有害な影響を最小限に抑えるようです (Head, Singh, & Bugg, 2012)。がん生存者では、運動は不安(Speck, Courneya, Masse, Duval, & Schmitz, 2010)と抑うつ症状(Craft, VanIterson, Helenowski, Rademaker, & Courneya, 2012)を軽減することが示されています。明らかに、運動はストレスを調整するための非常に効果的なツールなのです。
1970年代、心臓専門医のHerbert Bensonは、弛緩反応法と呼ばれるストレス軽減法を開発しました(Greenberg, 2006)。弛緩反応法は、リラクゼーションと超越瞑想を組み合わせたもので、4つの要素から構成されています(Stein, 2001)。
- 座り心地の良い椅子に正座し、足を地面につけ、体をリラックスさせる。
- 静かな環境で、目を閉じる。
- 「心を見つめて、体にやすらぎを」というような言葉(マントラ)を自分に言い聞かせる。
- 自然や体に栄養を届ける血液の温かさなど、心地よい思考に心をゆだねる。
弛緩反応法のアプローチは、交感神経の覚醒を抑えるストレス軽減のための一般的なアプローチとして概念化されており、高血圧の人々の治療に効果的に用いられています(Benson & Proctor, 1994)。
また、1970年代前半にハーバード大学のGary Schwartzが開発したバイオフィードバックは、ストレスに対抗するための技術です。バイオフィードバックでは、電子機器を用いて、人の神経筋活動や自律神経活動を正確に測定し、視覚信号や聴覚信号としてフィードバックします。この方法の主な前提は、誰かにバイオフィードバックを提供することで、通常は不随意である身体的プロセスを、ある程度自発的にコントロールできるようになる戦略を身につけることができるということです (Schwartz & Schwartz, 1995)。バイオフィードバックの研究では、顔の筋肉の動き、脳の活動、皮膚の温度など、さまざまな身体的指標が用いられており、緊張性頭痛、高血圧、喘息、恐怖症の患者に対してうまく適用されています(Stein, 2001)。
- 図14.23 (credit a: modification of work by “Damian Gadal_Flickr”/Flickr; credit b: modification of work by Christian Haugen)
- 図14.24 (credit a: modification of work by “UNE Photos”/Flickr; credit b: modification of work by Caleb Roenigk; credit c: modification of work by Dr. Carmen Russoniello)
- Access free at https://openstax.org/books/psychology-2e/pages/14-4-regulation-of-stress