学習目標
- 心理学者が使用するさまざまな研究方法を説明する
- 事例研究、自然観察、調査、資料研究の長所と短所を説明する
- 研究に対する縦断的なアプローチと横断的なアプローチを比較する
- 相関関係と因果関係を比較検討することができる
心理学者は、行動とその背景にある認知的・生物学的プロセスを理解し、記述し、説明するために、さまざまな研究手法を用いています。観察技術に頼る方法もあれば、研究者と調査対象者との間で行われるものもあります。他にも研究者と研究対象者の間で行われるアプローチがあり、一連の簡単な質問から詳細なインタビュー、対照実験など、様々なものがあります。
これらの研究手法にはそれぞれ長所と短所があり、また、それぞれの手法が特定の種類の研究課題にのみ適している場合もあります。例えば、観察を中心とした研究では、膨大な量の情報を得ることができますが、サンプル数が少ないため、この情報をより多くの人々に適用することには限界があります。一方、調査研究は、比較的大きなサンプルから簡単にデータを収集することができます。そのため、より多くの人々に結果を一般化することができますが、調査で収集できる情報は限られており、データの自己申告に関する問題が発生する可能性があります。また、既存の記録を利用してアーカイブ調査を行う研究者もいます。この方法は、かなり低コストでデータを収集することができ、多くの研究課題を解明することができますが、この方法を使う研究者は、どんな種類のデータがどのように収集されたかをコントロールすることができません。これまで説明してきた方法は、すべて相関的な性質を持っています。つまり、研究者は2つ以上の変数の間に存在する可能性のある重要な関係を語ることができるということです。しかし、相関のデータを因果関係の主張に用いることはできません。
相関研究では、2つの変数間の関係を見つけることができますが、研究者が変数間の関係が因果関係であると主張するには、実験を行うしかありません。この章で後述する実験的研究では、対象となる変数を非常に自由にコントロールすることができます。これは強力なアプローチですが、実験はしばしば非常に人工的な環境で行われます。このため、実験で得られた知見が現実の世界でどのように適用されるかという点で、その妥当性が疑問視されます。また、心理学者が答えたいと思っている問題の多くは、倫理的な問題のために実験的研究によって追求することができません。