錯誤相関
私たちがデータを誤って解釈してしまうのは、相関研究に基づいて誤った因果関係を主張してしまうことだけではありません。特に、非体系的な観測結果では、錯誤相関に陥ることがあります。錯誤相関とは、2つのものの間に関係がないのに関係があると思い込んでしまうことです。
よく知られているのは、月の満ち欠けが人間の行動に影響を与えるという錯誤相関です。月の満ち欠けが人間の行動に影響を与えている、具体的には満月のときに人は奇妙な行動をする、と熱弁を振るう人がいます(図2.14)。
月が私たちの地球に強い影響を与えていることは否定できません。海の潮の干満は、月の引力と密接に関係しています。そのため、私たちが月の影響を受けるのは理にかなっていると多くの人が考えています。私たちの体の大部分は水でできているのだから、というわけです。
しかし、約40の研究のメタ分析により、月と私たちの行動との関係は存在しないことが一貫して示されています(Rotton & Kelly, 1985)。月の満月時には奇異な行動に注意を払うかもしれませんが、奇異な行動の割合は月の周期を通して一定です。
なぜ私たちは、このような錯誤相関を信じてしまうのでしょうか?
多くの場合、読んだり聞いたりした情報をそのまま鵜呑みにしてしまうからです。あるいは、何かがどのように働いているかについてピンときて、その直感を裏付ける証拠を探し、その直感が間違っていることを示す証拠を無視してしまうことがあります(これは確証バイアスとして知られる)。
また、たとえ情報が非常に限られていたとしても、頭の中で最も簡単に思いつく情報をもとに、錯誤相関を見出だすこともあります。このような関係を利用して、自分の周りの世界をよりよく理解し、予測できると自信を持って言えるかもしれませんが、錯誤相関には大きな欠点があります。例えば、特定の行動は、不正確だが特定のグループに起因するという錯誤相関は、偏見的な態度の形成に関与し、最終的には差別的な行動につながるという研究結果があります(Fiedler, 2004)。