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3.4 脳と脊髄

03 生物心理学

脳イメージング

脳の損傷によって、脳のさまざまな部分の機能に関する情報が得られることを学んできました。しかし、最近では、脳に損傷を受けていない人でも、脳イメージング技術を使って情報を得ることができるようになってきました。このセクションでは、放射線、磁場、脳内の電気的活動などを利用して脳を画像化する技術について、さらに詳しくご紹介します。

放射線を使った方法

コンピュータ断層撮影computerized tomography scan(CT)では、体や脳の特定の部分を何枚ものX線で撮影します(図3.26)。X線は密度の異なる組織を異なる速度で通過するため、コンピュータはスキャンされた体の領域の全体像を構築することができます。CTスキャンは、腫瘍や著しい脳の萎縮があるかどうかを判断するためによく用いられます。

図3.26 CTスキャンは、脳腫瘍を示すのに使用できる。(a)左の画像は健康な脳を示しているが,(b)右の画像は左前頭葉の脳腫瘍を示している。

陽電子放出断層撮影法positron emission tomography(PET)では、生きており、活動している脳の写真を撮影することができます(図3.27)。PET検査を受ける人は,トレーサーと呼ばれる微弱な放射性物質を飲んだり注射したりします。

トレーサーが血液中に入ると、脳の任意の領域におけるトレーサーの量をモニターすることができます。脳の領域が活発になると、その領域に多くの血液が流れ込みます。そして、コンピューターがトレーサーの動きを監視し、ある行動の際の脳の活動領域と非活動領域の大まかな地図を作成するのです。

図3.27 PETスキャンは、脳のさまざまな部分の活動を示すのに役立つ。

PETスキャンは、詳細な情報が得られず、事象を時間的に正確に特定することができない上、脳に放射線を照射する必要があるため、代わりの診断方法としてfMRIに取って代わられています。しかし、特定の状況下においては、CTと組み合わせることで今でも用いられています。

例えば、CTとPETを併用することで、神経伝達物質の受容体の活動をより正確に把握することができ、統合失調症の研究に新たな道を開くことができます。このCTとPETのハイブリッド技術では、CTが脳の構造を鮮明に映し出し、PETが脳の活動を映し出します。

磁界を利用した手法

磁気共鳴画像法magnetic resonance imaging(MRI)は、強力な磁場を発生させる装置の中に人を入れて撮影します。この磁場によって、体内の細胞内の水素原子が動きます。磁場が止まると、水素原子は電磁信号を出して元の位置に戻ります。密度の異なる組織からは異なる信号が出ているので、それをコンピューターが読みとってモニターに表示します。

機能的磁気共鳴画像法functional magnetic resonance imaging(fMRI)も同じ原理で作動しますが、血流と酸素レベルを追跡することにより、脳活動の時間的変化を示します。fMRIでは、PETスキャンよりも詳細な脳の構造の画像が得られ、時間的な精度も向上しています(図3.28)。

図3.28 fMRIは、脳の活動を時間の経過とともに示します。この画像は、fMRIの1フレームを表している。

MRIとfMRIは、その詳細さゆえに、健康な人の脳と心理的障害と診断された人の脳を比較するためによく使われます。この比較は、こうした人々の間にどのような構造的・機能的な違いがあるかを明らかにするのに役立ちます。

学習へのリンク

MRIとfMRIのバーチャルラボ(英語)では、より詳しい情報を得ることができます。

電気信号を用いた手法

脳活動の実際の部位に関する情報でなく、脳の全体的な活動状況を把握することが有効な場合もあります。このような場合には、脳の電気的活動を測定する脳波検査electroenceph­alography(EEG)が有効です。人の頭の周りに電極を配置します(図3.29)。

図3.29 最新の脳波研究では、電極の付いた帽子を使って、脳全体の活動の正確なタイミングを調べることができる。

電極で受信した信号は、脳の電気的活動(脳波)として印刷され、記録された脳波の周波数(1秒間の波の数)と振幅(高さ)が、ミリ秒以内の精度で表示されます。こうした情報は、睡眠障害のある人の睡眠パターンを調べる研究者には特に有効です。

図3.15 credit: modification of work by Bruce Blaus

図3.16  credit c: modification of work by Aaron Bornstein

図3.19 credit a: modification of work by Jack and Beverly Wilgus

図3.26 credit a: modification of work by “Aceofhearts1968″/Wikimedia Commons; credit b: modification of work by Roland Schmitt et al

図3.27 credit: Health and Human Services Department, National Institutes of Health

図3.28 credit: modification of work by Kim J, Matthews NL, Park S.

図3.29 credit: SMI Eye Tracking

Openstax,”Psychology 2e 3.4 The Brain and Spinal Cord”.https://openstax.org/books/psychology-2e/pages/3-4-the-brain-and-spinal-cord

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