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4.1 「意識」とは何か?

04 意識

概日リズムの問題点

一般的に、多くの人の概日リズムは外界と一致しています。例えば、多くの人は夜になると眠り、昼間は起きています。睡眠と覚醒の周期を調整する重要な物質の一つに、メラトニンmelatoninというホルモンがあります。松果体pineal glandは、メラトニンを分泌する脳内の内分泌構造体であり、睡眠中のさまざまな生体リズムや免疫系の調節に関与していると考えられています(Hardeland, Pandi-Perumal, & Cardinali, 2006)。そして、メラトニンの放出は、暗闇では促進され、光によって抑制されます。

私たちの睡眠・覚醒の周期に関しては、個人差があります。例えば、「自分は朝型だ」という人もいれば、「自分は夜型だ」と考える人もいるでしょう。このような概日的な活動パターンの個人差はクロノタイプchronotypeと呼ばれており、朝型の人と夜型の人では、睡眠調節の仕方が異なるという研究結果もあります(Taillard, Philip, Coste, Sagaspe, & Bioulac, 2003)。睡眠調節sleep regulationとは、脳が睡眠と覚醒の切り替えをコントロールし、この周期を外界と同調させることを指します。

学習へのリンク

概日リズムとそれが睡眠に与える影響についての簡単な動画(英語)を見て、さらに理解を深めてください。

正常な睡眠の妨げとなるもの

朝型でも夜型でも、あるいはその中間でも、人の概日時計が外部環境と同期しなくなる状況があります。例えば、複数のタイムゾーンを移動するときです。このような場合、時差ぼけを感じることがあります。時差ぼけjet lagとは、人間の体内の概日リズムと環境との不一致によって生じる多くの症状を指します。このような症状には、疲労感、だるさ、イライラ、不眠症insomnia(週3日以上寝つきが悪くなる状態が1か月以上続くこと)などがあります(Roth, 2007)。

また、交代制のシフトワークを行っている人は、高い確率で概日リズムの乱れを経験します。ローテーション制シフト勤務rotating shift workとは、日単位または週単位で早番から遅番に変更する勤務スケジュールのことを指します。例えば、月曜は午前7時から午後3時まで、火曜は午前3時から午前11時まで、水曜は午前11時から午後7時まで勤務するというようなものです。このような場合、スケジュールが頻繁に変わるため、正常な概日リズムを維持することが困難になります。

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原題の「Why We Sleep」が、日本のビジネス書特有の熱血的なタイトルになっている点以外はおすすめできる1冊。

その結果、睡眠障害が発生したり、うつ病や不安神経症の症状が出たりすることがあります。このようなスケジュールは、医療従事者やサービス業に従事している人に多く見られ、疲労感や焦燥感が持続するため、仕事上のミスを犯しやすくなってしまいます(Gold et al.1992; Presser, 1995)。

このことは、交代制勤務に従事する中年の看護師の経験を調査した定性的研究で報告された事例に明確に示されています(West, Boughton & Byrnes, 2009)。インタビューを受けた看護師の何人かは、仕事のスケジュールが家族との関係に影響するとコメントしています。ある看護師はこう言いました。

「もし、あなたのパートナーが9時から5時まで仕事をしているとしたら、自分が疲れていないときに相手と楽しい時間を過ごせるかどうかが問題になるでしょう。そしてそれは、私が直面した問題のひとつでした。」(West et al., 2009, p. 114)

概日リズムの乱れは悪影響を及ぼす可能性がありますが、体内時計を外部環境に合わせるためにできることもあります。図4.4に示すように、明るい光を利用するなどのアプローチにより、時差ぼけや交代勤務による問題の一部が緩和されることが示されています。体内時計は光で動いているので、シフト勤務中は明るい光を浴び、勤務していないときは暗い光を浴びることで、不眠症や不安・抑うつの症状を改善することができます(Huang, Tsai, Chen, & Hsu, 2013)。

図4.4 このような機器は、明るい光を浴びることで、規則的なサーカディアンサイクルを維持できるように設計されている。夜勤をしている人や、光の季節変動の影響を受けている人に役立つことがある。

学習へのリンク

時差ぼけの克服についての動画(英語)を見て、ヒントを学んでください。

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