睡眠は一様な状態ではありません。そうではなく、いくつかの異なる段階で構成されており、それぞれの段階で発生する脳波活動のパターンによって区別されます。目覚めているときの脳波は、ベータ波が中心です。睡眠中の脳波パターンと比較すると、ベータ波は周波数が最も高く(13〜30Hz)、振幅が小さく、変動が大きい傾向にあります。私たちが眠り始めると、脳波の活動は変化します。この変化は、脳波検査によって可視化することができ、脳波の周波数と振幅の両方によって区別されます。脳波の周波数とは、1秒間にいくつの脳波が発生するかを示すもので、周波数はヘルツ(Hz)で表されます。振幅とは、脳波の高さのことです(図4.7)。睡眠は、大まかに2つの異なる段階に分けられます。レム睡眠とノンレム睡眠です。レム(急速眼球運動) 睡眠は、まぶたが閉じた状態で眼球が動くのが特徴です。レム睡眠時の脳波は、覚醒時の脳波と非常によく似ています。一方、ノンレム(NREM)睡眠は、特徴的な脳波のパターンによって互いに区別され、3つの段階に細分化されます。睡眠の最初の3段階はノンレム睡眠であり、最後の4段階目がレム睡眠です。ここでは、それぞれの睡眠段階と、それに伴う脳波の活動パターンについて説明します。
ノンレム睡眠の段階
私たちが眠り始めると、ノンレム睡眠に入り、脳波は周波数が減少し、振幅が大きくなります。ノンレム睡眠の最初の段階は、ステージ1の睡眠として知られています。この段階の睡眠は、覚醒と睡眠の間に発生する移行期で、私たちが眠りにつくまでの期間を指します。この間は、呼吸と心拍の両方の速度が低下しています。また、全身の筋肉の緊張と体温の低下が見られます。
脳波では、ステージ1にはアルファ波とシータ波が見られます。ステージ1の初期には、アルファ波が発生します。このような電気的な活動パターン(波)は、非常にリラックスしているが目は覚めている人の状態に似ていますが、ベータ波に比べて変動が少なく(同期している)、周波数が比較的低く(8〜12Hz)、振幅が大きいのが特徴です(図4.8)ステージ1が継続すると、シータ波の活動が増加します。シータ波は、アルファ波よりもさらに周波数が低く(4〜7Hz)、振幅の大きな波です。ステージ1の状態の人を目覚めさせるのは比較的容易です。実際、ステージ1の睡眠中に目覚めた場合、眠っていなかったと報告することもあります。
ステージ2の睡眠に入ると、体は深いリラックス状態になります。脳の活動は相変わらずシータ波が中心ですが、睡眠紡錘波と呼ばれる短時間の活動によって中断されます(図4.9)。睡眠紡錘波とは、急速的・突発的な高い周波数の脳波であり、学習や記憶に重要であると考えられています(Fogel & Smith, 2011; Poe, Walsh, & Bjorness, 2010)。さらに、K-複合の出現は、しばしばステージ2と関連しています。K-複合は、非常に高い振幅の脳活動パターンであり、場合によっては環境刺激に反応して生じることもあります。したがって、K-複合は、環境で起こっていることに反応して、より高いレベルの覚醒に至る橋渡しの役割を果たしているのかもしれません(Halász, 1993; Steriade & Amzica, 1998)。
ノンレム睡眠ステージ3は、低周波(3Hz以下)で高振幅のデルタ波が特徴的であることから、深睡眠や徐波睡眠と呼ばれることもあります(図4.10)。このデルタ波は、睡眠中の脳波パターンの中で最も周波数が低く、振幅が大きいのが特徴です。この間、心拍数と呼吸数は劇的に減少し、ステージ3の睡眠からの目覚めは、それ以前のステージに比べてはるかに困難であると言われています。興味深いことに、ステージ3でアルファ波(覚醒とステージ1への移行に関連することが多い)の脳波活動が増加した人の多くは、睡眠時間にかかわらず、起床時にリフレッシュした感じがしないと報告します(Stone, Taylor, McCrae, Kalsekar, & Lichstein, 2008)。