私たちの知覚は、私たちの信念、価値観、偏見、期待、そして人生経験にも影響を受けます。この章の後半でご紹介するように、発達の重要な時期における両眼視の経験が十分にできていない人は、奥行きを認識するのが難しくなります(Fawcett, Wang, & Birch, 2005)。また、ある文化的背景の中で人々が共有する経験は、知覚に顕著な影響を与えます。例えば、Marshall Segall、Donald Campbell、Melville Herskovits(1963)は、多国間の研究結果を発表し、西洋文化圏の人は非西洋文化圏の人に比べて、ある種の視覚的な錯覚を経験しやすく、その逆もまた然りであることを示しました。西洋人が体験しやすい錯視の1つに、ミュラー・リヤー錯視(図5.4)があります。線の長さが違うように見えますが、実際には同じ長さです。
このような知覚の違いは、ある文化的背景を持つ人々が日常的に経験している環境の種類の違いと一致しています。例えば、西洋文化圏の人々は、直線でできた建物という知覚的な文脈を持っており、Segallの研究ではこれを「Carpentered World(カーペンタード・ワールド)」と呼びました(Segall et al.)。一方、南アフリカのズールー族のように、丸い小屋を円形に配置して村を作っているような非西洋文化圏の人々は、このような錯覚に陥りにくいことがわかっています(Segall et al.1999)。
また、文化的な要因によって影響を受けるのは、視覚だけではありません。匂いを識別し、その心地よさや強さを評価する能力も、文化によって異なることが実証されています(Ayabe-Kanamura, Saito, Distel, Martínez-Gómez, & Hudson, 1998)。
スリルを求めるタイプの子供は、強烈な酸味を好む傾向があるということから(Liem, Westerbeek, Wolterink, Kok, & de Graaf, 2004)、性格の基本的な側面が知覚に影響を与えている可能性が考えられます。さらに、低脂肪食品に対して肯定的な態度をとっている人は、低脂肪食品に対してあまり肯定的な態度をとっていない人に比べて、低脂肪と表示された食品をおいしく感じると評価する傾向もあります(Aaron, Mela, & Evans, 1994)。
図5.3 credit: Cory Zanker
Openstax,”Psychology 2e 5.1 Sensation versus Perception”.https://openstax.org/books/psychology-2e/pages/5-1-sensation-versus-perception