強化
人や動物に新しい行動を教える最も効果的な方法は、正の強化です。正の強化(提示型強化)では、望ましい刺激を加えて行動を増加させます。
例えば、5歳の息子、太郎君に「部屋をきれいにしたら、おもちゃをあげるよ」と言ったとします。太郎君は、新しいお絵かきセットが欲しくて、すぐに部屋を掃除します。
ここで、ちょっと立ち止まってみましょう。”なぜ、期待されていることをした子供にご褒美を与えなければならないのか?”と言う人もいるかもしれません。しかし実際には、私たちは生活の中で常に一貫してご褒美を与えられています。お給料もご褒美ですし、成績が良かったり、志望校に合格したりすることもご褒美です。良い仕事をして褒められたり、運転免許試験に合格したりすることもご褒美です。
学習ツールとしての正の強化は非常に効果的です。例えば、読書成績が平均以下の学区の状況を改善する最も効果的な方法の一つは、子供たちにお金を払って読ませることだったということがわかっています。具体的には、ダラスの小学2年生を対象に、本を読み、その本に関する短いクイズに合格するたびに2ドルが支払われました。そしてその結果、読解力が大幅に向上したのです(Fryer, 2010)。このプログラムについて、あなたはどう思いますか?もしSkinnerが今生きていたら、このプログラムを素晴らしいアイデアだと思うでしょう。彼は、学校で生徒の行動に影響を与えるためにオペラント条件づけの原理を使うことを強く支持していました。実際、Skinnerは、スキナー箱に加えて、学習の小さなステップごとに報酬を与えるように設計されたティーチングマシンと呼ばれるものを発明しており(Skinner, 1961)これはコンピュータによる学習支援の先駆けとなりました。Skinnerのティーチングマシンは、生徒がさまざまな教科を学習する際に、その知識をテストするものでした。生徒が問いに正解すれば、すぐに正の強化を受けて継続することができ、不正解の場合は強化を受けません。これは、生徒は次の強化を受ける機会を増やすために、さらに時間をかけて学習するという考えに基づいています(Skinner, 1961)。
負の強化(除去型強化)では、望ましくない刺激を取り除くことで行動を増加させます。例えば、自動車メーカーのシートベルトシステムは、負の強化の原理を利用したもので、シートベルトを締めるまで「ピッ、ピッ、ピッ」と鳴り続けます。あなたが望ましい行動(シートベルトを締める)をとると、その不快な音は止まるので、あなたが将来シートベルトを締める可能性が高まります。負の強化は馬の訓練にもよく使われます。騎手は手綱を引いたり、脚で圧迫してプレッシャーをかけ、馬がターンやスピードアップなどの望ましい行動をしたらプレッシャーを取り除きます。プレッシャーは、馬が取り除きたいと思っている負の刺激なのです。
罰
オペラント条件づけにおいて、負の強化と罰を混同している人は多くいますが、この2つは全く異なるメカニズムです。強化は、たとえそれが負であっても、常に行動を増加させるものでした。それに対して罰は、常に行動を減少させるものです。
正の罰では、望ましくない刺激を加えて行動を減少させます。正の罰の例としては、生徒が授業中にメールをするのをやめさせるために生徒を叱ることが挙げられます。この場合、行動(授業中のメール)を減少させるために、刺激(叱責)を加えます。負の罰では、行動を減少させるために快い刺激を取り除きます。例えば、子供が悪さをしたときに、親がお気に入りのおもちゃを取り上げることがあります。この場合、行動を減少させるために、刺激(おもちゃ)を取り除きます。
罰は、特にそれが即座に行われる場合、望ましくない行動を減少させるための1つの方法となります。例えば、あなたの4歳の息子、次郎君が弟を叩いたとします。そこであなたは次郎君に「弟を叩かない」と100回書かせます(正の罰)。そうすれば、おそらく彼はもうこの行動を繰り返さないでしょう。このような戦略は現在は一般的になっていますが、昔の子どもたちは尻叩きなどの体罰を受けることが多くありました。しかし、体罰にはいくつかの欠点があることを知っておく必要があります。まず、体罰によって恐怖心が芽生えることがあります。次郎君は罰を与えた人、つまり親であるあなたを怖がるようになるかもしれません。同様に、教師から体罰を受けた子どもは、教師を恐れ、学校を避けようとするかもしれません(Gershoff et al., 2010)。そのため、米国ではほとんどの学校が体罰を禁止しています。第二に、体罰によって子どもが攻撃的になり、反社会的な行動や非行に走りやすくなる可能性があります(Gershoff, 2002)。子供たちは、親が怒ったりイライラしたりしたときに尻叩きに頼るのを見て、今度は自分が怒ったりイライラしたりしたときに同じ行動をとるようになるかもしれません。例えば、花子が悪いことをしたときに親が花子を叩くので、花子は友達がおもちゃを分けてくれないと叩くようになるかもしれません。
正の罰が有効な場合もありますが、Skinnerは、罰の使用は起こりうる悪影響と照らし合わせて判断すべきだと提案しました。現在の心理学者や子育ての専門家は、罰よりも強化を重視しています。子供が何か良いことをしているのを見つけて、それに対してご褒美を与えることを推奨しているのです。