乳児期~小児期
新生児の平均体重は約3.0kgです。小さくても完全に無力というわけではありません。なぜなら、生まれた瞬間から、反射神経と感覚の能力によって環境との相互作用が可能だからです。すべての健康な赤ちゃんは、生まれつき、特定の刺激に対して自動的に反応する原始反射を持っています。この反射機能は、新生児がより複雑な行動を取れるようになるまでの間、生き延びるために重要な役割を果たします。この反射は、脳が正常に発達している赤ちゃんに見られ、通常は生後4〜5ヶ月頃に消失します。では、この反射のいくつかを見てみましょう。探索反射とは、新生児の頬に何かが触れたときの反応のことです。赤ちゃんの頬をなでると、自然とその方向に頭を向け、吸い始めます。吸啜反射とは、乳児が学習せずとも自動的に行う、口で吸う動作のことです。他にもいくつかの興味深い新生児の反射が観察できます。例えば、新生児の手に指を置くと、手のひらに触れたものを自動的に掴む把握反射が見られます。モロー反射は、赤ちゃんが落ちそうになったときの反応です。赤ちゃんは両手を広げたり、引っ込めたりして、(たいてい)泣きます。これらの反射は、生後数ヶ月間の生存をどのように促進するでしょうか?
動画で学習
幼い乳児は何を見て、何を聞いて、何を嗅ぐのでしょうか?新生児の感覚的な能力は重要ですが、その感覚はまだ完全には発達していません。新生児が生まれながらにして持っている嗜好性の多くは、養育者や他の人間との交流を促進するものです。視覚は最も発達していない感覚ですが、新生児にはすでに顔を好む傾向があります。生後数日の赤ちゃんは、人の声を好み、音声を伴わない音よりも音声を長く聞き、(Vouloumanos & Werker, 2004)、知らない人の声よりも母親の声を好むようです(Mills & Melhuish, 1974)。生後3週間の赤ちゃんにおしゃぶりをくわえさせ、母親の声と見知らぬ人の声を録音したものを聞かせるという面白い実験があります。母親の声を聞いた赤ちゃんは、より強くおしゃぶりを吸いました(Mills & Melhuish, 1974)。
また、新生児は強い嗅覚を持っています。例えば、生まれたばかりの赤ちゃんは、自分の母親の匂いと他人の匂いを区別することができます。MacFarlane(1978)の研究では、母乳で育てられている生後1週間の赤ちゃんを2枚のガーゼの間に挟みました。一方のガーゼは他人である授乳中の母親のブラジャーで、もう一方のガーゼは乳児の実の母のブラジャーでした。その結果、生後1週間の赤ちゃんの3分の2以上が、母親の匂いのするガーゼの方を向きました。
身体の発達
乳児期、幼児期、そして児童期は、身体の発達が急速に進みます(図9.10)。新生児の体重は平均して5〜10ポンド(およそ2.3~4.5㎏)であり、通常、6ヶ月で2倍、1年で3倍になります。2歳になると体重は4倍になりますので、2歳児の体重は20~40ポンド(およそ9~18㎏)になると予想できます。新生児の平均身長は50㎝ほどで、12ヶ月で75㎝、2歳で87㎝ほどになります(WHO Multicentre Growth Reference Study Group, 2006)。
乳幼児期と児童期には、成長は一定の速度では起こりません(Carel, Lahlou, Roger, & Chaussain, 2004)。4歳から6歳の間は成長が遅くなります。この時期には、体重は5~7ポンド(2.3〜3.2kg)増え、1年でおよそ2~3インチ(5〜7.5cm)成長します。女子は8〜9歳になると、青年期の成長加速により、成長率が男子を上回ります。この成長スパートは12歳頃まで続き、月経周期の開始と重なります。10歳になると、女の子の平均体重は88ポンド(およそ40kg)、男の子の平均体重は85ポンド(およそ85.5kg)になります。
以前は、人間は生まれたときからすべての脳細胞を持っていると考えられていました。最近の研究では、ニューロン新生(神経細胞の(National Institute of Neurological Disorders and Stroke,形成)は大人になっても続くと言われています。しかし、神経接続と経路の大部分は、子供の人生の最初の数年間に発生します(National Institute of Neurological Disorders and Stroke,2019)。この神経が急速に成長する期間はブルーミングと呼ばれます。神経経路の発達は、青年期まで続きます。神経の成長の開花期の後には、神経の接続が減少する刈り込みが続きます。刈り込みによって脳の機能がより効率的になり、より複雑なスキルを習得できるようになると考えられています(Hutchinson, 2011)。刈り込みは、生後数年間に行われ、幼少期から青年期にかけて、脳のさまざまな領域で継続して行われます。
私たちの脳の大きさは急速に増大します。例えば、2歳児の脳は成人の55%の大きさで、6歳になると成人の約90%の大きさになります(Tanner, 1978)。幼児期(3〜6歳)には、前頭葉が急速に成長します。このコースの冒頭で脳の4つの葉について説明したように、前頭葉は、計画、推論、記憶、衝動の制御に関連しています。そのため、小学校に入る頃には、注意力や行動をコントロールする能力が発達します。
小学生になると、前頭葉、側頭葉、後頭葉、頭頂葉のサイズが大きくなります。小児期に経験する脳の成長加速は、Piagetの認知発達の順序に従う傾向があり、認知の進歩は神経機能の著しい変化によって説明できます(Kolb & Whishaw, 2009; Overman, Bachevalier, Turner, & Peuster, 1992)。
運動機能の発達は、乳児の反射的な反応(吸啜、探索など)から、より高度な運動機能へと順を追って進んでいきます。例えば、赤ちゃんはまず首が据わることを学び、次に補助付きのお座りをし、そして一人で座れるようになり、その後、ハイハイをするようになり、そして歩くようになります。
運動技能とは、体を動かしたり、物を操作したりする能力のことです。微細運動技能は、手指、足指、目の筋肉に焦点を当て、小さな動作(例:おもちゃをつかむ、鉛筆で書く、スプーンを使う)を協調して行う能力です。粗大運動技能は、腕や脚を制御する大きな筋肉群に焦点を当て、より大きな動きを伴います(バランスをとる、走る、跳ぶなど)。
運動能力の発達には、幼児が達成すべき発達のマイルストーンがあります(表9.4)。それぞれのマイルストーンには、平均年齢と、そのマイルストーンに到達すべき年齢の範囲があります。発達のマイルストーンの例として、お座りがあります。ほとんどの赤ちゃんは、平均して生後7カ月で一人で座れるようになります。お座りには協調性と筋力の両方が必要で、90%の赤ちゃんが生後5カ月から9カ月の間にこのマイルストーンを達成します。別の例では、生後6週間で首が据わるようになり、生後3週間からの4ヶ月の間に90%の赤ちゃんが達成しています。もし、生後4カ月になっても首が据わっていなければ、それは遅れがあるということです。いくつかのマイルストーンで遅れが見られる場合は、懸念すべき理由となりますので、親御さんや介護者の方は、お子さんのかかりつけの小児科医に相談してみてください。発達の遅れの中には、早期介入によって発見し、対処できるものもあります。
年齢(歳) | 身体的 | 個人的/社会的 | 言語的 | 認知的 |
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2 | ボールを蹴る、 階段を上り下りする | 他の子どもと一緒に遊ぶ、 大人の真似をする | 呼ばれた名前の物を指す、 2~4語をまとめて文章にする | 形や色を分類する、 2段階の指示に従う |
3 | 登る、走る、 三輪車をこぐ | 順番を守る、 色々な感情を表現する、 着替える | 身近な物の名前を言う、 代名詞を使う | 架空の遊びをする、 部品(レバー、ハンドル)を使っておもちゃを動かす |
4 | ボールを捕る、 ハサミを使う | 一人遊びよりも社会的な遊びを好む、 好きなことや興味のあることを知っている | 歌や韻を記憶する | 色や数の名前を言う、 文字を書き始める |
5 | ブランコや片足立ちができる、 フォークやスプーンを使う | 本物と偽物を区別する、 友達を喜ばせるのを好む | はっきりと話す、 完全文を使う | 10 以上の数を数える、 いくつかの文字を活字で書く、 基本的な形を写す |