4.1 「意識」とは何か?
意識の状態は一日のうちで、そして生涯を通じて変化します。これらの変化における重要な要因は生体リズムであり、より具体的には視交叉上核(SCN)が作り出す概日リズムです。一般に、人間の体内時計は外部環境と連動しており、この時計を設定する上で、光が重要な手がかりとなる傾向があります。複数のタイムゾーンをまたぐ旅行や、交代制の勤務では、概日リズムの乱れが生じ、不眠、眠気、覚醒度の低下を招くことがあります。高照度光療法は、概日リズムの乱れに対処する上で有望であることが示されています。睡眠不足が続くと、睡眠負債が蓄積され、心理的・生理的にさまざまな悪影響が出る可能性があります。
4.2 睡眠―なぜ人は眠るのか
私たちは非常に多くの時間を睡眠に費やしており、脳は睡眠をさまざまに制御する複雑なシステムを持っています。また、身体の成長や成熟に重要ないくつかのホルモンは、睡眠中に分泌されます。私たちがなぜ眠るのか、その理由はまだ謎のままですが、睡眠が学習や記憶に非常に重要であることを示唆するいくつかの証拠があります。
4.3 睡眠の段階
睡眠の各段階は、それぞれの段階に関連する脳波のパターンによって特徴付けられます。覚醒状態から入眠に移行すると、アルファ波(α波)がシータ波(θ波)に置き換わります。ステージ2の睡眠では、睡眠紡錘体とK-複合が出現します。ステージ3とステージ4は、デルタ波(δ波)が優位な徐波睡眠とされています。レム睡眠は、急速な眼球運動、随意筋の麻痺、そして夢を伴う状態です。ノンレム睡眠とレム睡眠は、学習と記憶において重要な役割を果たすと考えられています。夢は、夢を見る人にとって重要な人生の出来事を表しているのかもしれません。あるいは、夢を見ることは、意識中の人を助ける心の中の原意識の状態、または仮想現実を表しているのかもしれません。
4.4 睡眠の問題と障害
多くの人が、人生のある時点で、何らかの睡眠障害に悩まされています。不眠症は、入眠や睡眠維持が困難となる一般的な症状です。睡眠時随伴症は、睡眠中に不要な運動行動や体験を伴うもので、RBD(レム睡眠行動障害)、夢遊病、レストレスレッグ症候群、夜驚症などがあります。睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が停止するもので、乳幼児突然死症候群の場合は、睡眠中に呼吸が停止し、死に至ります。ナルコレプシーは、起きている間に無性に眠たくなる症状で、しばしばカタプレキシー(情動脱力発作)や幻覚を伴います。
4.5 物質の使用と乱用
物質使用障害とは、DSM-5において、物質の使用が否定的な結果をもたらしているにもかかわらず、強迫的に使用を続ける行動パターンと定義されています。この障害では、身体的依存と心理的依存の両方が重要な要素となっています。アルコール、バルビツール酸系、ベンゾジアゼピン系は中枢神経抑制剤で、GABA神経伝達に影響を与えます。コカイン、アンフェタミン、カチノン、MDMAは中枢神経刺激剤で、ドーパミン神経伝達に影響を与え、ニコチン、カフェインはそれぞれアセチルコリンとアデノシンに影響を与えます。オピエートは内因性オピオイド系に作用して強力な鎮痛剤として機能し、幻覚剤は感覚や知覚の体験に顕著な変化をもたらします。幻覚剤は、作用する特定の神経伝達系によって様々です。
4.6 その他の意識の状態
催眠は行動や経験の変化が暗示された自己に焦点を当てたものです。瞑想は、リラックスしながらも、意識を集中させるものです。催眠状態も瞑想状態も、意識の変容を伴うことがあり、様々な身体的・心理的障害の治療に応用できる可能性があります。