これまでの説明で、宇宙はとてつもなく大きく、とてつもなく空虚であることがおわかりいただけたと思います。平均すると、宇宙は私たちの銀河系の1万倍も空っぽなのです。とはいえ、これまで見てきたように、私たちの銀河系でもほとんどが空っぽの空間です。私たちが吸っている空気は、1㎤中に約1019個の原子が含まれています(これでも私たちは普段、空気は何もない空間だと考えています)。そしてこれが銀河系の星間ガスの中になると、1㎤の中に約1個の原子しかありません。さらに、銀河間の空間は非常に希薄で、1個の原子を見つけるためには、平均して1㎥(1㎤の100万倍)の空間を探さなければなりません。宇宙のほとんどは空っぽで、人間の体のように密度の高い場所は非常に稀なのです。
私たちがよく知っている固体も、ほとんど宇宙といえます。このような固体を1つ1つ分解していくと、最終的には固体を構成する小さな分子にたどり着きます。分子とは、あらゆる物質がその化学的性質を保ったまま分割できる最小の粒子です。例えば、水(H2O)の分子は、2つの水素原子と1つの酸素原子が結合したものです。
一方、分子は原子から構成されています。原子とは、ある元素を構成する、その元素として識別することができるなかで最小の粒子です。例えば、金の原子は、金の最小単位です。自然界には100種類近くの原子(元素)が存在します。そのほとんどが希少なもので、ほんの一握りのものが、私たちが接するすべてのものの99%以上を占めています。現在、宇宙に最も多く存在する元素を表1.1に示します。この表は、元素に関する宇宙の「大ヒット商品」と考えてください。この表には、地球上の生物に最もよく使われている4つの元素(水素、炭素、窒素、酸素)が含まれています。
元素1 | 記号 | 水素原子100万個に対する割合 |
---|---|---|
水素Hydrogen | H | 1,000,000 |
ヘリウムHelium | He | 80,000 |
炭素Carbon | C | 450 |
窒素Nitrogen | N | 92 |
酸素Oxygen | O | 740 |
ネオンNeon | Ne | 130 |
マグネシウムMagnesium | Mg | 40 |
ケイ素Silicon | Si | 37 |
硫黄Sulfur | S | 19 |
鉄Iron | Fe | 32 |
すべての原子は、正の電荷を帯びた原子核が、負の電荷を帯びた電子に囲まれています。原子の物質の大部分は原子核にあり、原子核では正の陽子と電気的に中性の中性子が非常に小さな空間に緊密に結合しています。各元素は、原子の中の陽子の数によって定義されます。例えば、原子核に6個の陽子を持つ原子を「炭素」、50個の陽子を持つ原子を「スズ」、70個の陽子を持つ原子を「イッテルビウム」と呼びます。
原子核から電子までの距離は、通常、原子核の大きさの10万倍です。これが、「固体であってもほとんどが空間である」と言われる所以です。典型的な原子は、海王星までの太陽系よりもはるかに空っぽなのです。(例えば、地球から太陽までの距離は、太陽の大きさの100倍しかありません)。これが、原子が太陽系のミニチュアのようなものではない理由の1つです。
驚くべきことに、物理学者は、最小の原子核から最大の超銀河団まで、宇宙で起きているすべてのことが、重力、電磁気力(電気と磁気の作用を合わせたもの)、そして原子核レベルで働く2つの力(強い力と弱い力)、という4つの力の作用だけで説明できることを発見しました。4つの力があるという事実は、長年にわたり物理学者や天文学者を悩ませ、自然界の統一的な姿を追求するきっかけとなりました。
シミュレーションで学習
粒子ごとに原子を作ってみましょう。
脚注
1原子核に含まれる陽子の数である原子番号の順に並べたもの。
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