なぜ生態学を学ぶのでしょうか?おそらくあなたは、自然界や、生き物がどのように環境の物理的条件に適応してきたかについて学ぶことに興味があるのではないでしょうか。あるいは、将来の医師として、患者の健康と環境との関係を理解しようとしているのかもしれません。
人間は生態系の一部であり、人間の健康は、物理的・生活的環境と人間の相互作用の重要な一部分です。たとえば、ライム病は、私たちの健康と自然界との結びつきを示す現代の一例です(図44.1)。ライム病は、正式にはライムボレリア症といい、シカダニ(アメリカ東部ではIxodes scapularis、太平洋岸ではIxodes pacificus)に咬まれると人に感染する細菌感染症です。シカダニはこの病気の主要なベクター(ベクター:病原体を媒介する生物)です。しかし、すべてのダニが病原体を保有しているわけではなく、また、すべてのシカダニがヒトにライム病を引き起こす原因となる細菌を保有しているわけでもありません。また、I. scapularisとpacificusは、シカ以外にも宿主を持つことができます。実際、シカに寄生するダニよりも、シロアシネズミに寄生するダニの方が、細菌を保有している割合が高く、感染の確率は寄生する宿主の種類に依存することが判明しています。宿主となる動物がどのような環境で、どのような人口密度で生息しているかを知ることは、医師や疫学者がライム病の感染経路を理解し、その発生を抑制するために役立つでしょう。
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