哲学(philosophy)の扉を開くとき、私たちは人類が長年にわたり紡いできた壮大な知の物語に足を踏み入れることになる。それは、単に知識を蓄積する作業ではない。むしろ、世界と私たち自身について、より深く、より根源的に理解しようとする、絶え間ない問いと探求の営みなのだ。高校までのカリキュラムでは馴染みの薄いこの学問に、あなたは少し戸惑いを覚えるかもしれない。しかし、おそらくあなたは、知らず知らずのうちに哲学的な問いに触れてきたはずだ。自由意志は存在するのだろうか? 神は存在するのだろうか? 深夜、友人や家族とそんな深遠なテーマについて語り合った経験はないだろうか。あるいは、あなたの周りに、いつも物事の本質を問い、まるで謎かけのような問いを発する「哲学的」な友人はいないだろうか。もしそうなら、あなたはすでに哲学の世界の入り口に立っているのだ。
この章では、歴史的な学問分野としての哲学の輪郭を描き出すことから始めよう。哲学とは一体どのような営みなのか、哲学者は何を探求するのか。その答えを探るために、まずは古代世界の様々な文化圏に目を向け、哲学の源流ともいえる「賢者」たちの姿を追ってみよう。そして、哲学が自然界の探求へと向かい、科学の母胎となった経緯をたどる。さらに、現代の哲学者が哲学をどのように捉えているのかを探りながら、哲学がもつ包括的で根源的な性質を明らかにしていく。この章は、あくまで哲学という広大な領域への入り口に過ぎない。あなたの役割は、さらに探求し、深く考え、書物を読み、そして哲学者(philosopher)のように書くことだ。やがてあなたは、自らが哲学をしていることに気づくかもしれない。
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