章の概要
16.1 遺伝子発現の制御
16.2 原核生物の遺伝子制御
16.3 真核生物のエピジェネティック遺伝子制御
16.4 真核生物の転写遺伝子制御
16.5 真核生物の転写後遺伝子制御
16.6 真核生物の翻訳・翻訳後遺伝子制御
16.7 癌と遺伝子制御
体内の体細胞は通常、それぞれ同じDNAを持っています。例外としては、成熟した状態ではDNAを持たない赤血球と、抗体を産生する際にDNAを再配列する免疫系細胞があります。とはいえ、一般的には、目が緑色かどうか、髪の毛が茶色かどうか、食べ物がどれだけ早く代謝されるかを決定する遺伝子は、目と肝臓の細胞で同じです。これらの器官は全く異なる機能を持っているにもかかわらず、です。
それぞれの細胞が同じDNAを持っているというのなら、どうして細胞や臓器は異なるのでしょうか?なぜ目の細胞と肝臓の細胞はこれほどまでに違うのでしょうか?
各細胞は同じゲノムとDNA配列を共有していますが、各細胞は同じ遺伝子のセットをオン(発現)にはしていません。それぞれの細胞は、その機能を果たすために異なるタンパク質のセットを必要とします。そのため、細胞内ではごく一部のタンパク質のみが発現しています。タンパク質が発現するためには、DNAがRNAに転写され、RNAがタンパク質に翻訳されなければなりません。私たちの体内の特定の細胞は特定の機能を持っているため、ある細胞で、DNAにコードされたすべての遺伝子がRNAに転写されたり、タンパク質に翻訳されたりしているわけではありません。目を構成する特殊なタンパク質(虹彩、水晶体、角膜)は目にしか発現しませんし、心臓の特殊なタンパク質(ペースメーカー細胞、心筋、弁)は心臓にしか発現しません。私たちのDNAにコードされた全遺伝子のうち、常に一部の遺伝子だけが発現し、タンパク質に翻訳されているのです。特定の遺伝子の発現は、多くのレベルと段階を経て高度に制御されたプロセスです。この複雑さにより、適切な時期に適切な細胞で適切な発現が行われるのです。
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